簡単に貼れて、整形出来て、乾燥が不要ですぐ剥がせるもの。そんなマスキング材料を探してみました。いくつか候補を選んでテストした結果をご報告します。
マスキングの課題
液体のマスキング剤というと、昔はマスキングゾルくらいしかありませんでした。厚盛すると流動し、乾燥まで少し待つ必要があり、塗装すると剥がれないことがありました。剥がれない場合、水に浸けてふやかす必要がありました。
その後、マスキングゾルNEOが発売されました。こちらはゴム系エマルジョン。多少使い勝手が良くなりましたが、固まると水に溶けません。剥がれないとき除去困難になる欠点がありました。
そこで私は、マスキングゾルに、マスキングゾルNEOを混ぜて使ってきました。これはマスキングゾルより剥がしやすく、剥がれないとき水でふやかすことができます。それでも使いやすいとはいえませんでした。
粘土状マスキング材料の候補
簡単に貼れて、整形が楽に出来て、乾燥が不要で、すぐ剥がせるもの。それがマスキングの理想です。この特性を満たすものに粘土状のパテがあります。
粘土状マスキング材の市販品はホライジング MASKING GUMしかありません。その他、身近な材料として練り消しゴムが使われているようです。そこで、候補になりそうな材料を集めて比べることにしました。
写真は、ねり消しゴム、ブルタック、スライム(水性)、ワンダーサンド、ホライジング MASKING GUM
MASKING GUMはモデラーの間で評判の材料です。中身はやや流動性のあるゴムで、柔らかいねり消しゴムといった感じです。
ワンダーサンドは100均で見つけた商品で「まとまる砂」。不思議な感触があります。
パテ状の材料は他にもありますが、油が残る油性のパテは候補から外しました。また、常温で硬すぎるチューインガムも対象外としました。
実験方法
CDの光学面に乗せ、マスキング材料の実験と評価を行います。
除去性
塗装した後、綺麗に剥がれる度合いを示します。マスキングゾルはこれが課題でした。
形状安定性
整形後の経時変化を評価します。
施工性
爪楊枝などを使って微細な整形ができるか試します。ここは適度な粘着力と、伸ばしたとき戻らない(弾性が弱い)ことが求められます。
粘着力
作業性に関係する項目です。強すぎると手にべたつきやすく、弱すぎると素材に付きません。スライムは表面に水の膜があるので、相手に密着するまで少し時間がかかります。
耐熱性
120℃のオーブンに30分入れて成分の染み出しや材料の変化を観察します。
耐溶剤性
ラッカー薄め液に溶けるかどうか、調べます。
硬さ
5段階評価します。5が最も硬いとします。
弾性
弾性が弱いものほど、マスキング材として使いやすいです。
引張強度
手早く引っ張ったときの破断強度を定性的に比べます。5が最も強いとします。
実験結果
表1 マスキングパテの評価結果
除去性 | 形状安定性 | 施工性 | 粘着力 | 耐熱性 | 耐溶剤性 | 硬さ | 弾性 | 引張強度 | |
文房堂 ねりゴム | 〇 | ◎ | 〇 | 3 | ◎ | × | 5 | 弱 | 3 |
サクラ ねり消しゴム RDD-150 |
〇 | ◎ | 〇 | 3 | ◎ | × | 5 | 弱 | 3 |
2COLOR ねり消し (100均) |
△ | ◎ | 〇 | 3 | ◎ | × | 4 | 弱 | 2 |
スタンプ そうじねりけし | △ | ◎ | 〇 | 4 | ◎ | × | 4 | 弱 | 3 |
㈱長光 ブル・タック | ◎ | ◎ | 〇 | 5 | ◎ | × | 5 | 弱 | 5 |
ホライジング MASKING GUM | 〇 | △ | ◎ | 2 | △ | × | 3 | 無 | 3 |
ワンダーサンド(100均) | ◎ | ◎ | △ | 0 | × | × | 0 | 無 | 0 |
カラフルゼリー(スライム) (100均) |
〇~× | × | × | 5 | × | ◎ | 1 | 弱 | 1 |
マスキングゾルで課題だった除去性を調べるために用意したテストピース。写真は爪楊枝をローラー代わりして薄く伸ばした部分を作り、上から油性塗料を厚めに吹き付けたところ。一番右のスライムだけ、塗料の乾燥に伴い少し縮んでいます。
剥がしてみたところ。綺麗に剥がれたのはワンダーサンド、スライム。それ以外ではブルタックが良好でした。強度が高く、引っ張りで切れにくいためです。
他のパテは薄く塗り伸ばしたところが残りますが、普通の厚みで使う分には問題ありません。
面白いのがワンダーサンド。砂粒の集合である為、境界がぼやけます。境界をボカしたい用途に使えるかもしれません。
紙の上に貼りつけて120℃のオーブンで30分加熱した結果。紙に何か染み出さないか、形状や素材が変化しないか、観察します。
左上は MASKING GUM 。溶けて泡立っています。何かの揮発成分が混ざっているようです。普通にまとまりますが、加熱前よりだいぶ硬くなっています。
右下のワンダーサンドは溶剤のようなものが紙に染みつき、乾燥してしまいました。
スライムについて
安くて沢山使える材料ですが、放っておくと流動して細かい隙間に入り込んでしまい、除去困難になります(水にも溶剤にも、あまり溶けません)。乾燥する性質も厄介で、マスキングには使えません。
結論~お勧めはこれだ!
1.文房堂 ねりゴム または サクラ ねり消しゴム(RDD-150)
評価はどちらも同じ。多くの特性についてバランスに優れた材料です。流動しないため隙間に入り込みません。比較的広い部分のマスキングに便利です。紙やテープなど他のマスキング材料と接触しても大丈夫です。
2.ホライジング MASKING GUM
粒子が細かく、多少流動する性質がフィギュアの目など細かい部分のマスキングに便利です。時間がたつと細かい隙間に入り込むため注意が必要。平面的な部分のマスキングに適しています。
今後、長期使用して気づいたことを追記していきます。
<参考購入先>
文房堂 ねりゴム
サクラ ねり消しゴム(RDD-150)
G PARTS MASKING GUMはこちらからも入手できます
<参考文献>
消しゴム(Wikipedia) ねり消しゴムは加硫せずに作られたゴムのようです
ねり消しの製造工程 香り付きねり消しの製造工程です